※ 本記事は2026年7月時点の情報をもとにしています。制度の詳細や個別の判定は、勤務先や年金事務所にご確認ください。

私は地方でパート薬剤師として3〜4ヶ所の薬局を掛け持ちしています。掛け持ちを考えたとき、意外と情報が見つからなくて困ったのが社会保険の話でした。

  • 「掛け持ちだと社会保険はどうなるの?」
  • 「労働時間って合算されるの?」
  • 「パートでも社会保険に入れるの?」

結論から言うと、私は1ヶ所の薬局でパートとして社会保険に加入しています。そして正直、パートで社保に入れたからこそ、今の掛け持ちスタイルが成立したと思っています。

この記事では、掛け持ち薬剤師の社会保険のルールと、2026年10月から始まる改正について整理します。

まず基本:パートが社会保険に入る条件(2026年7月時点)

パート・アルバイトの社会保険(健康保険・厚生年金)の加入条件は、2段構えになっています。

① 全事業所共通のルール:週30時間の壁

従業員数に関係なく、週の労働時間が正社員の4分の3以上(目安:週30時間以上)なら加入対象です。

② 従業員51人以上の事業所だけのルール:週20時間の壁

勤め先が**従業員51人以上の事業所(特定適用事業所)**の場合は、以下をすべて満たすと加入対象になります。

  • 週20時間以上働いている
  • 月額賃金8.8万円以上
  • 2ヶ月を超える雇用見込み
  • 学生でない

ここで薬剤師に大事なポイント。時給3,000円なら週20時間で月約24万円なので、賃金要件(月8.8万円)は自動的にクリアします。つまり薬剤師パートの場合、実質的な分かれ目は「週何時間働くか」と「職場の規模」の2つだけです。

「従業員51人」の数え方に注意

この「51人」は単純な頭数ではなく、厚生年金の被保険者数(フルタイム+週・月とも4分の3以上働くパート)でカウントします。しかも法人単位(同じ法人の全店舗合計)です。

  • 大手チェーン薬局・ドラッグストア → 法人全体でカウントするので、ほぼ確実に対象
  • 個人経営の薬局 → 事業所ごとのカウントなので、対象外のことが多い

つまり、同じ「週20時間」でも、大手チェーンなら社会保険に入り、個人薬局なら入らない、ということが起こります。

掛け持ちの場合のルール:労働時間は合算されない

掛け持ち薬剤師にとって一番大事なルールがこれです。

社会保険の加入判定は、職場ごとに行われます。労働時間は合算されません。

たとえば3ヶ所で週12時間ずつ、合計週36時間働いていても、各職場で加入条件を満たさなければ、社会保険には入れません。その場合は自分で国民健康保険+国民年金に加入することになります。

逆に、どこか1ヶ所で条件を満たせば、その職場の社会保険に加入できます。複数の職場で同時に条件を満たした場合は「二以上事業所勤務届」という手続きをして、保険料を按分する仕組みもあります。

私の実体験:「社保に入れる1ヶ所」が掛け持ちの土台になった

私は掛け持ち先のうち1ヶ所で、パートとして社会保険に加入しています。

これは偶然ではなく、掛け持ちを組み立てるときに意識したポイントでした。軸になる職場でしっかり働いて社会保険に入り、残りの職場は柔軟にシフトを組む。この形にすると:

  • 健康保険料・厚生年金保険料を会社と折半できる(国保・国民年金は全額自己負担)
  • 将来の年金が厚生年金として上乗せされていく
  • 病気やケガで働けなくなったときの傷病手当金がある(国保にはありません)

一方で、知り合いの薬剤師には、国保のまま掛け持ちしている人もいます。その方は職場に社会保険への加入を希望したものの、会社側から断られてしまったそうです。パートの社保加入は、職場の規模や会社の姿勢によって現実が大きく変わります。

だからこそ、掛け持ち前提で求人を探すなら「社会保険に入れるか」を最初に確認することをおすすめします。求人サービス経由なら、担当者に「パートで社保加入できる職場か」を事前に確認してもらえます。私が使ったのはファルマスタッフセルワーク薬剤師です。

2026年10月から何が変わる?

ここからが本題です。社会保険の適用拡大が、これから段階的に進みます。

① 賃金要件(月8.8万円)の撤廃:2026年10月〜

「106万円の壁」と呼ばれていた月額8.8万円の賃金要件が撤廃されます。週20時間以上働けば、収入額に関係なく加入対象になります。

ただし前述のとおり、薬剤師は時給が高く、週20時間働けば月8.8万円をもともと大きく超えています。薬剤師パートへの実質的な影響はほぼありません。

② 企業規模要件の段階的撤廃:2027年10月〜

掛け持ち薬剤師に効いてくるのはこちらです。「従業員51人以上」の要件が、段階的に引き下げられていきます。

時期 対象となる事業所
現在 従業員51人以上
2027年10月〜 36人以上
2029年10月〜 21人以上
2032年10月〜 11人以上
2035年10月〜 すべての事業所

つまり、今は「週20時間の壁」と無縁だった中小規模の薬局のパートも、順次「週20時間で社会保険加入」の世界に入っていきます。

掛け持ち薬剤師への影響

この改正で、掛け持ちの組み立て方は2つの方向に分かれていくと思います。

  1. 軸の1ヶ所で社会保険に入る(私のスタイル)— 改正の影響はほぼなし。むしろ「パートでも社保に入りやすくなる」ので追い風です
  2. 全職場を週20時間未満に抑えて扶養内・国保で働く — 各職場の従業員数と自分の労働時間の管理がこれまでより重要になります

どちらが得かは、世帯の状況(配偶者の扶養に入っているか)や将来設計によって変わります。ただ、薬剤師の時給で「社会保険を避けるために労働時間を削る」のは、収入面ではもったいない選択になりがちです。保険料の負担以上に、稼げる金額と保障が大きいからです。

まとめ:掛け持ちするなら「社保に入れる軸の職場」を最初に決める

  • パートの社会保険は職場ごとに判定され、労働時間は合算されない
  • 薬剤師は賃金要件を自動クリアするので、分かれ目は「週の労働時間」と「職場の規模」
  • 2027年10月から企業規模要件が段階的に撤廃され、中小薬局のパートも週20時間ラインの対象に
  • 掛け持ちの土台として、社会保険に加入できる軸の職場を1つ確保するのが私のおすすめ

社会保険は地味なテーマですが、掛け持ちの働きやすさと将来の安心を左右する土台です。求人を探す段階から「社保に入れるか」を確認して、掛け持ちの設計に組み込んでみてください。


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