医療機関は、お盆を休みにするところが多いと思います。

私自身、薬剤師として働いてきて、お盆に出勤したことは一度もありませんでした。

それが今年、初めてお盆に働きました。掛け持ち先のC薬局です。

なぜお盆に開けることになったのか

理由はシンプルで、C薬局の門前の病院が、お盆も診療する方針の病院だったからです。

病院が開いていれば、処方箋は出ます。処方箋が出るなら、薬局も開けなければいけません。

そういうわけで、人生で初めてのお盆出勤が決まりました。

正直なところ、始まる前は「そんなに患者さんは来ないだろう」と思っていました。世の中が休みなのだから、病院も静かなのではないか、と。

その予想は、半分外れました。

思ったより、患者さんがいました

ふたを開けてみると、受診される方はそれなりにいらっしゃいました。

来られる方は、大きく2つに分かれていたように思います。

ひとつは、急に具合が悪くなった方

コロナ、風邪、熱中症。この時期らしい顔ぶれです。新しく来られる患者さんも、ちらほらいらっしゃいました。

こういう方は、普段は別の病院をかかりつけにしていることが多いです。でもお盆でそこが閉まっている。だから、開いている病院を探して来られたわけです。

具合が悪いのに、まず「どこが開いているか」を調べるところから始めなければいけない。考えてみると、なかなか大変なことだと思います。

もうひとつは、お盆だから来られた方

こちらは逆です。

普段から飲んでいる定期薬を、お盆休みを使って受診しに来られた方。仕事があると平日の日中に病院へ行くのは難しいですから、まとまった休みは受診のチャンスでもあるんですね。

そしてもう一組、印象に残ったのがご家族の送り迎えで来られた高齢の患者さんです。

働き盛りの娘さんや息子さん、お孫さんが帰省していて、その車で連れてきてもらう。普段は「足がない」から通院しづらい方が、お盆だからこそ受診できる。

お盆に病院が開いているというのは、こういう方にとっては大きいのだと知りました。

逆に、いなかった方

一方で、普段はいるのに今回はいなかった方もいます。

夕方の、仕事終わりの駆け込み受診です。

言われてみれば当たり前なのですが、世の中が休みだと、来局される時間帯そのものが変わります。夕方に慌ただしくなる、あの感じがありませんでした。

裏側で起きていたこと|卸が休み

さて、患者さんから見える部分はここまでです。

ここからは、薬局の裏側の話をします。お盆の一番の問題は、医薬品の卸業者さんが営業していないことでした。

普段であれば、在庫が足りない薬があっても、卸さんに連絡すればその日のうちに持ってきてくれます。これは本当にありがたい仕組みで、薬局はこの前提の上に成り立っていると言ってもいいくらいです。

お盆は、それができません。

もちろん、あらかじめ想定はしていました。この時期は在庫を厚めにして備えていました。

それでも、在庫切れは出ました。

対応としては、系列の店舗から小分けしてもらうかたちでしのぎました。同じグループの薬局に「この薬、少し分けてもらえませんか」とお願いして回すわけです。

お盆に薬局を開けて分かった3つのことを示す図解。門前の病院がお盆も診療するため薬局も開けることに。①来る患者さんの顔ぶれが変わる:コロナ・風邪・熱中症の急患や新患は普段別の病院に通う人が開いている病院を探して来院、お盆休みを使って定期薬を受診する人や帰省した子や孫の送り迎えで通院できる高齢の患者さんもいる一方、夕方の仕事終わりの駆け込み受診はない。②医薬品の卸が止まる:普段なら足りない薬はその日のうちに届くがお盆は卸が休み。在庫を厚めにして備えても在庫切れは出るため系列店から小分けしてもらって対応。③だから渡し方を変える:お盆明けまで足りる分だけ渡し残りはお盆明けに渡す。一人にまとめて渡すと次に同じ薬が必要な人が来たときに何も渡せなくなるから。開いている薬局があるということは、その裏側で誰かが在庫をやりくりしているということでもある

足りないとき、どう渡すか

在庫が足りないとき、患者さんへの渡し方も普段とは変わります。

今回とった方法は、お盆明けまで足りる分だけをお渡しして、残りはお盆明けに取りに来ていただくというものでした。

なぜ全部お渡ししないのか。理由があります。

その後、別の患者さんに同じ薬が処方されるかもしれないからです。

最初に来た方にまとめてお渡ししてしまうと、次に同じ薬が必要な方が来られたときに、何もお渡しできなくなってしまいます。卸が動いていない以上、その日のうちに補充することもできません。

だから、渡すのは最低限にする。お盆が明けるまでの分だけ確保していただいて、残りは後日。

患者さんには二度足を運んでいただくことになるので、申し訳なさはあります。それでも、目の前の一人にすべて渡して次の人に何も渡せなくなるより、全員に必要な分が行き渡るほうを選ぶ。そういう判断でした。

薬局が開いているということは、その裏側で誰かが在庫をやりくりしているということでもあるのだと、あらためて思いました。

時間に余裕があったから、聞けた話

もうひとつ、書いておきたいことがあります。

お盆の勤務は、普段よりも時間に余裕がありました。夕方の駆け込みがない分、流れが穏やかだったのだと思います。

その余裕のおかげで、患者さんと少しお話をすることができました。

そのなかで、戦争を体験された92歳の女性とお話しする機会がありました。

どんな話をしたかは、ここには詳しく書きません。ただ、その方の言葉を聞きながら、いま自分が置かれている状況のありがたさを、静かに考えていました。

お盆に働くことになって、そうでなければ会わなかった方と、そうでなければ持てなかった時間を持った。そういうことも、あるんですね。

また働きたいと思いました

3日間を終えての結論を書きます。

また働きたいと思いました。

理由はいくつかあります。

ひとつは、他のスタッフのなかにも休みたい人がいるということ。私が出られるなら、出たい。困ったときはお互い様というのは、いつも思っていることです。

もうひとつは、意外なところですが移動が楽だったことです。

C薬局は遠方にあるので、勤務のたびに長距離を運転しています。この移動の負担は、掛け持ちを続けるうえでずっと考えてきたことでした。

それがお盆は、道路が空いていました。朝の通勤ラッシュもありません。同じ距離を走っているのに、体の疲れがまったく違いました。

ただし、いいことばかりでもありません。

お盆や夏休みの時期は、ホテル代が上がります。 C薬局の勤務は宿泊を伴うので、宿泊費はいつもより嵩みました。

それでも、これは必要経費だと思っています。運転が片道になるだけで疲労はまったく違いますし、その差はお金には代えられません。

まとめ|お盆に薬局を開けるということ

初めてのお盆出勤で分かったことを、まとめます。

  • 患者さんは思ったよりいる。ただし顔ぶれは変わる(急患・お盆だから受診できる人・家族の送り迎えで来られる人)
  • 夕方の駆け込み受診はない。世の中が休みだと、来局の時間帯そのものが動く
  • 一番大変なのは卸が休みなこと。在庫を厚くしても在庫切れは出るので、系列店から小分けしてもらって対応する
  • 足りない薬は、お盆明けまでの分だけ渡す。次に来る人の分を残すため
  • 移動は楽。ただし宿泊費は上がる

お盆に開いている医療機関があることを、これまでは「ありがたいですね」くらいにしか思っていませんでした。

実際に中に入ってみると、開けるためにいろいろな準備と、その場その場の判断が積み重なっていることが分かりました。

もし、お盆やお正月に受診される機会があったら、こんな覚えがあると少し役に立つかもしれません。

薬が足りずに分割でのお渡しになることがあります。 それは薬局が用意を怠ったからではなく、卸が動いていない期間の、みんなに行き渡らせるための調整です。残りを取りに行く手間はかかりますが、そういう事情があるのだと知っていただけたら嬉しいです。

C薬局での気づきは、これからも記事にしていきます。

ちなみに、お盆に出るかどうかを自分で選べるのは、掛け持ちという働き方だからでもあります。私自身、掛け持ち先を探すときは薬剤師専門の求人サービスを使って、勤務日数や条件を相談しながら決めてきました。働き方を見直したい方の参考になればと思い、実際に使ったサービスを下にまとめておきます。


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